今回は自民党改憲草案の基本的人権についてレポートしていきます^^
ひょんな事から、この自民党改憲草案を見ることになってのですが、自民党改憲草案ってご存知ですか?
ザックリいうと自民党の『こことここの部分の憲法を変えたい』を集約した提案書です。
よく、この自民党改憲草案を憲法改正の項目だと思ってる人がいますが違います(^^;
あくまで草案、提案書です。
しかもこの自民党改憲草案が提案されたのは平成24年です。この時、自民党は野党でした。谷垣代表だった時に作られたものです。
因みに野党だったのて改憲草案の文言なども多少強引に作られたらしいです(^^;
↑ ↑ ↑
これは自民党本部に電話して改憲草案の事をいろいろ質問したのですが、その時対応していただいた男性職員に聞いた話しです(^^;
強引だろうと自民党の改憲に対しての考え方を知るには、とっても大事な資料な訳です。
その自民党改憲草案から基本的人権が削除される事になってると言うんで、この辺をレポートしていきます。
『主権在民』『平和主義』とともに日本国憲法の三大原則の一つである『基本的人権』を日本国憲法から削除すると言うことは、人間が生まれながらに持ってる当然の権利、自由を奪う…と言うことです。
自民党は改憲草案で本当にそんなの事言ってるのか、その真意についてレポートしてみたいと思います。
目次
自民党改憲草案から基本的人権がホントに消えた?
まずは、自民党改憲草案から基本的人権がホントに消えたのかって話しですが、これは本当に消えました。削除されています。
もともと憲法に基本的人権は11条と97条に書かれています。
第11条
国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。第97条
この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。※日本国憲法引用
どうです?
『なんか、同じじゃネ?』って、思いません?
ズラリと並んだ憲法条文に、同じような事が11条と97条に書かれているのです。
どっちか一つで良いですよね。
ただでさえ難しそうな憲法なんだから、よりシンプルにした方が良いですよね。
自民党改憲草案でも同じ事をが書かれているから、ひとつを削除しよう。…と提案してる訳です。
基本的人権そのものをを削除するのではなく、重複してる97条を削除しようと提案してる訳です。
憲法の基本的人権が重複した理由
因みに憲法に基本的人権(11条、97条)が重複したのはGHQのコートニーホイットニーが自ら起草した条文だったからなのです。
このホイットニーと言う人、かなりの実力者(権力者)で、当時の日本政府は黙認してしまったと言われています。
ホイットニーに忖度(そんたく)したわけですね^^;
ホイットニーが、かなりの実力者(権力者)とわかるエピソード
コートニーホイットニーと言えばマッカーサーの腹心といわれた人物なんです。
敗戦当時日本の占領管理はアメリカだけじゃなく、ソ連、イギリス、中国を含めた極東委員会が行う事になっていました。
憲法改正など日本の大きな問題はGHQの上に位置する極東委員会が決定する事になっていたのです。
ただ、小案件や急ぎで決めなかればならない事などは、現地のGHQ決済で決められるというルールもあったのです。
いわば現場の『店長決済』みたいなものですね^^
この店長決済を熟知していたホイットニーは、マッカーサーに『日本の憲法をこの店長決済(GHQ決済)で決めましょうと』進言したのです。
…と、言うのも、もし極東委員会まで行くと中国、ソ連など社会主義系の意見も憲法に反映せざる得なくなり現場のGHQとしては色々とやりにくくなっちゃうからなんです。
こうした状況を回避する為にホイットニーはマッカーサーに進言したのです。
実際、日本国憲法はGHQによって作れました。
こんな感じで、GHQの影の実力者ホイットニー民政局長、直々の起草だった為、当時の松本烝治(まつもとじょうじ)国務大臣、吉田茂(よしだしげる)外務大臣も11条97条の重複は分かっていたのに削除できなかったと言われています。
ただ、それから70年経ったいま当時のGHQに忖度する必要のない自民党は今回の自民党改憲草案で97条を削除提案してるのです。
自民党改憲草案の基本的人権削除理由11条と97条は本当に重複してる?
ではホントに憲法11条と97条の基本的人権は重複してるのでしょうか。
実は重複してるとも言えるし重複してないとも言えるのです。
文の中での語の続きぐあいは、ほぼ同じなのですが、11条と97条と…記載されている位置が違い、それぞれの役割が違うのです。
憲法で基本的人権が書かれている位置ってどこ?
まずはコチラをご覧ください。こちらが日本国憲法の全体構成です。
第1 章 | 天皇 | 1条から8条 |
第2 章 | 戦争の放棄 | 9条 |
第3 章 | 国民の権利及び義務 | 10条から40条 |
第4 章 | 国会 | 41条から64条 |
第5 章 | 内閣 | 65条から75条 |
第6 章 | 司法 | 76条から82条 |
第7 章 | 財政 | 83条から91条 |
第8 章 | 地方自治 | 92条から95条 |
第9 章 | 改正 | 96条 |
第10 章 | 最高法規 | 97条から99条 |
第11 章 | 補則 | 100条から103条 |
日本国憲法で『基本的人権』が書かれている位置は11条は第3章の『国民の権利及び義務』で、97条は第10章の『最高法規』の範囲で出てきてます。
で、いきなり3章とか10章とミクロな説明をしても分かりにくいと思いますので、先に憲法の全体構成をザックリ説明しますね。
日本国憲法のザックリとした構成
日本国憲法は全部で11章103条からなっています。
第1章と第2章
第1章の『天皇』から始まって、第2章は今なにかと騒がれてる9条『戦争放棄』の規定があります。
第3章
第3章は10条から40条まであって私たち国民の義務と権利について書かれています。
信教の自由、教育を受ける権利、裁判を受ける権利などが書かれていて11条の基本的人権も3章に書かれている訳です。
!因みに…
国民の義務と権利について書かれている…と、言いましたが3章のほとんどが国民の権利で義務は納税、勤労、教育を受ける義務の3つしか書かれていません。
第4章から第9章
第4章から第9章までは国会や内閣などの統治機構についての規定です。内閣や国会など国家権力に対してのシバリや規定が書かれています。
!因みに
憲法って、我々国民が国家権力に対する指示書なんです。よく憲法って法律の最高峰、最高法規と言われるから、我々国民が守るべきものすごいきついルールが書かれているように思えますけど、守るべきは『国民』ではなく『国家権力』なんです。
国家権力とは政府や国会とか公務員なんかも国家権力に入ります。この第4章から9章の条文を読んでみると、そのニュアンスがよく分かると思います。
第10章
そして第10章は、97条98条99条あり、この憲法が最高峰にある規定だと言っています。
97条で基本的人権が憲法の最優先事項と言っておいて、98条でそれに違反する法律や命令や詔勅(しょうちょく)は一切認めないと書いています。詔勅(しょうちょく)とは天皇が国民など公に意思を表示する文書の事です。で、99条で国家権力者達はこの憲法を尊重し擁護する義務があると言ってます。
この第10章が1セットで憲法の姿と言いますか…『憲法とは?』を説明する文章が書かれている訳です。
そう考えると10章が憲法のはじめ、『1章』にあるほうが憲法全体の構成がしっくりいくと思いませんか?
ホントはそうしたようでしたが明治憲法の順序を踏襲したため、いまのような天皇から始まる順序になったんです。
第11章
で、最後の11章は補則で、国会運営の手続き的な条文が書かれています。
以上が、日本国憲法のザックリ構成です。
自民党改憲草案が言ってるようにホントに97条を削除してよいと思う?
で、ここでこの記事の本題の、自民党改憲草案97条の基本的人権の削除ですが、草案に11条との重複を理由に削除して良いかって話しですが、ここまで読んでいただいて、どう思います?
ダメですよね^^;
ダメだって思いません?
文章を額面通り取れば、確かに重複してる箇所が多数ありますが、その使われ方は11条と97条で違う訳です。
意味合いとして違う訳です。条文の性格が違うという事です。
それぞれ条文の意味を掘り下げて見てみましょう。
憲法97条の意味
前述したように97条があるのは10章です。
で、その10章は97条98条99条3つで1セットで憲法が最高法規であると説明してる訳です。
で、初めの97条で『憲法が…』という書きだしで、憲法が最高法規であるのは基本的人権があるから…と説明し、98条、99条へ展開しています。
第10章 最高法規
第97条
この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。第98条
この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。第99条
天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。※日本国憲法引用
この97条が削除されると憲法は人がそもそも持ってる基本的人権から始まる…と言う意味合いが無くなり、下手すると国家権力が人に与える権利という意味合いになりかねません。
憲法11条の意味
一方憲法11条は第3章にあって3章は前述したように国民の権利義務について書いてある章です。
『国民は…』という書きだしで、国民の権利として基本的人権について簡単に全体像が書かれています。しかも12条13条といっしょに基本的人権の取説的意味合いで記載しています。
第3章 国民の権利及び義務
第11条
国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
第12条
この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。第13条
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。※日本国憲法引用
自民党改憲草案が言ってる97条削除はダメじゃね?
以上のように11条97条は、条文としての意味合いが違うので、削除すべきでないと思います。
また憲法を改正するという事は、現憲法からの変更な訳で、当たり前ですが、既存の条文がある訳です。
『これから憲法を作る…』なら別ですが、もともとあった条文を削ると言う事は、単に不要だから削ったという意味だけじゃなく、特別な意味にとらわれるかもしれない危険がはらんでる事を考えるべきだと思います。
一応、言っておきますが私は憲法改正自体は賛成です。
ただ、この自民党改憲草案の基本的人権削除には反対という事です^^;
追記 | 自民党に電話した感想
最後に追記いたします。
今回、改憲草案の考え方や解釈などで自民党本部に電話をかけさせてもらいましたが、凄いですね~。
何が?って自民党の電話対応です。
民間の空気バリバリ感じました(^^)
最初はお役所的に色んな所にまわされて待たされて…と覚悟してたのですが、ワンコールか、ツーコールでまず女性が出て、『改憲草案について聞きたいのですが…』と言うと、『要望もありますか?』と聞いてくれ、ない旨を伝えると『お待ちください』と憲法改正本部?(ここは聞き取れなかったのですが)に繋いでくれ、そこからは男性の方が親切丁寧に質問に答えていただきました。
うちの会社でも見習おうって思うくらいスピーディさ&的確なご対応でした(^^)
一連の電話対応、すごく良かったので記述しておきます。
自民党本部の方ありがとうございました!
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